もくじ
スポーツ障害
①シンスプリント
②鵞足炎・腸脛靱帯炎
③テニス肘・ゴルフ肘(野球肘)
スポーツ外傷
④骨折・捻挫
⑤肉離れ
①シンスプリント
シンスプリントとは?
シンスプリントとは脛骨過労性(疲労性)骨膜炎のことですべてのスポーツ選手における下腿障がいの60%を占めるとの発表がある様に、スポーツ選手・愛好家には頻度の多い疾患です。中学生から高校生に多い傾向があります。
しかし、疲労骨折との区別が大切です。シンスプリント、疲労骨折の初期ともX線ではその証拠が写りません。
両者の区別にはMRI検査(特にT2脂肪抑制という特殊な撮影条件)が必要です。
症状
すねの骨(脛骨)の中央から下の方(3分の1)に疼痛があります。
スポーツ競技のシーズン初期に痛みが強くなり、シーズンが進むにつれて痛みは軽減することもあります。
原因
下腿(下肢)の筋肉に疲労が蓄積することにより、脛骨の骨膜に炎症が起きてしまうことが痛みの原因です。
・スポーツの練習量の多さ、練習・試合における硬い地面、古いシューズ(かかとの外側がすり減っている)
・ふくらはぎの筋群(ヒラメ筋など)の柔軟性が低下し、その引っ張り力により炎症が起きる
・扁平足や回内足など障害が発生しやすい足の形
・運動の質や量の急激な変化(初心者が急に運動を始めた時に多く起こる)
などが挙げられます。
病院に行くのなら
整形外科が専門になります。病院では、アイシングや外服薬(湿布)、内服薬(痛み止め)が処方され、電気治療が処置されることもあります。
鍼灸院での治療
シンスプリントに対して、痛みを軽くする・痛まないようにする・再発防止・発症予防のためには鍼灸治療がとても有効です。鍼灸治療には、局所の血流を改善させることにより、筋肉の緊張を緩和させる効果があります。長期的には、下肢のストレッチ・土踏まず部分のトレーニング・運動フォームの改善なども並行して行うとより有効です。鍼灸治療が未経験の方もぜひ、一度当院の治療を受けていただきたいです。
自分でできるケア
炎症症状なので、痛みのある場合は慢性化を避けるために休養をとる必要があります。
・練習量の軽減と練習後のアイシング
・硬い地面での練習を避ける。シューズのクッション性が低下しているならクッション性が良く安定した新規のシューズに変える
・足底や足関節周囲の筋肉の強化やストレッチを行なう
などが重要となります。
②鵞足炎・ランナー膝(腸脛靱帯炎)
鵞足炎とは
右膝の内側の鵞足(がそく)部から大腿屈筋群(膝を曲げるときに使う筋肉で大腿部の後ろの筋肉)にかけて痛みがあり(図1・図2参照)、膝の不安定性や半月板など、その他の損傷を示す徴候がないことから、鵞足炎(がそくえん)と診断できます。
鵞足は、縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はくきん)、半腱様筋(はんけんようきん)が腱となり膝の内側で脛骨の上部に付着している部分です。鵞鳥の足のような形をしているところから、こう呼ばれています。(図2参照)
鵞足炎は、この鵞足腱や鵞足包(鵞足と内側側副靱帯の間にある滑液包)が炎症を起こしている状態です。陸上競技やサッカーの選手に多く、ランニング動作で脚を後ろに蹴り出す時やサッカーのキックで蹴り出した脚を減速させる時などに、過度の負荷がかかったり、鵞足と内側側副靱帯とがこすれあったりして起こります。ウォーミングアップ不足や、急に長い距離を走ったり使いすぎたりということが原因としてあげられますが、X脚(膝をまっすぐにそろえて立つと足首の内側にすき間ができる)や回内足(着地時に足が外がえしになる)などの骨格異常や練習場所(アスファルト、坂など)にも起因しますので、注意してください。
《処置》
・痛みが強い時は、安静にする。少し痛みがとれた時点で練習を再開しがちですが、すぐに再発するので十分に安静期間をおき、その間はランニング以外のトレーニングで補強する。
・大腿部のストレッチングを十分に行い、筋肉の緊張をほぐし、鵞足にゆとりをもたせるようにする。
・痛みが発生した直後(運動直後)は冷やすが、慢性的な痛みには患部を温め(温熱療法)血液循環をよくする。
・X脚や回内足が原因の場合、シューズの底の内側を高くする方法もある。(この場合専門家に相談した方がよい)
《予防》
(1)練習前後のストレッチングを十分行う。(特に大腿屈筋群)
(2)練習直後はアイシングを行う、その後は患部を温める。
(3)ランニングの距離は徐々にのばすようにする。
(4)練習場所にも注意する。(土のグラウンドや平らなところを選ぶ)
腸脛靭帯炎とは
腸脛靭帯は腸骨稜から大腿外側をとおり脛骨外側に至る長大な靭帯です。
近位部では大腿筋膜張筋と大殿筋とも繋がっています。(図3参照)
膝関節の安定機構でもあります。
ランニングや自転車など、膝の屈伸をくり返すことによって、腸脛靭帯が大腿外側上顆の骨隆起の上を移動するため摩擦をくり返し、腸脛靭帯に局所的な炎症を起こして膝の外側に痛みが発生します。
オーバートレーニングが原因で発症する場合と、急に長距離を走ったり、山登りをしたときに発症する場合があります。
ある一定距離を走ると痛みを生じることや、下り坂を走る時に痛みを増すのが特徴です。
スピード練習によりストライドを広げることも要因となります。体型的要因として内反膝、回内足があります。
《症状》
症状はランニング時、ランニング後の膝外側の疼痛であり(図4参照)、ある一定の距離を走ったときに疼痛が出現するのが特徴です。
大腿骨外側顆に限局した圧痛を認めます。
《処置》
保存的治療が基本であり、手術治療の適応となることはほとんどありません。
まず原因となっているランニング量を減らす。
練習前後の腸脛靭帯のストレッチングは極めて有効です。
走行中に疼痛が生じたときもストレッチをしたあとウォーキングにきりかえます。
走行距離を急に伸ばしたり、インターパルトレーニングなどのスピード練習のやり過ぎ、道路の同じ側ばかり走ることなどには気をつけてください。
鍼灸院での治療
鵞足炎・ランナー膝の鍼灸治療は、まず炎症を鎮めるため、局所の鍼灸治療に加え関係する太ももへのアプローチを行います。特徴として、筋肉の硬直や、運動時の痛みがある場合が多いため、筋肉の硬直と痛みを緩和します。さらに、影響を与えている身体の不具合を特定し、再発予防の為の全身の治療も同時に行っていきます。鍼灸治療を行うと痛みが緩和されるだけでなく、日常生活やトレーニングを通常通り行いながら回復に向かっていくことができます。鍼灸治療の最大の特徴は、治療効果を上げながら今ある生活スタイルやトレーニング計画を変化させることなく行えるところにあります。状態によっては、運動制限を設ける場合もありますが、できるだけスケジュールは崩さずに治療を行う事ができます。
また、鍼灸治療・スポーツ鍼灸治療と並行してリハビリトレーニングやストレッチが必要になってきます。
③テニス肘・ゴルフ肘(野球肘)
テニス肘・ゴルフ肘(野球肘)とは?
テニスの様にラケットを持って行うスポーツをする方にみられる肘の疾患です。
腕の筋肉は肘に、ほとんど付着しています。腕を使いすぎたり、
ボールの衝撃等で肘に負担がかかることにより、筋肉や腱の微細な断裂により、テニス肘になります。
テニスで肘の外側を痛める場合は上腕骨外側上顆炎、肘の内側を痛める場合は上腕骨内側上顆炎と言われています。ゴルフ肘(野球肘)は、この上腕骨内側上顆炎のことです。
原因
腕を酷使したり、腕の筋肉の柔軟性低下・プレイスタイル・ラケットの問題等、様々な原因が考えられます。
上腕骨外側上顆炎はテニスのバックハンドをした際、ボールの衝撃で筋肉が付着する肘の外側に負担がかかって発生しることが多いです。
上腕骨内側上顆炎はテニスのフォアハンド等により、肘の内側に痛みが発生します。
症状(重症度によって異なります)
1.手首を曲げたり伸ばして肘が痛む(外側損傷場合、手を手の甲側に曲げると肘が痛む。内側損傷の場合は手を手のひら側に曲げると肘が痛む。)
2.圧痛がある(肘の傷めた箇所を押すと痛みがあります。)
肘を痛めた直後の処置
炎症を抑える目的にRICE処置を行います。
痛み除去、再発予防の為のリハビリテーション
●痛みが出ない様、包帯やテーピングや肘バンド等で固定。
●腕の筋肉の緊張を緩める手技。
●筋肉が修復した後、肘の筋力戻す為のリハビリ。または、ストレッチングを 十分行い筋肉の柔軟性をつけることが重要です。
試合や大会には、ホワイトテープやキネシオテープやサポータ―などを巻き、痛み出ない様に処置をします。
④骨折・捻挫
足首や足のケガの代表的なものに、捻挫と骨折があります。
足関節をひねってケガをする事が多いのですが、骨折があるかないかを判断するのは難しい場合があります。病院でもレントゲンのみでは分からず、診断にはMRIやCTなどの検査が必要な場合があります。
捻挫でも、靭帯が切れて足関節の安定性が失われている場合がありますので、注意するようにしてください。
直後の対処法
スポーツ外傷(骨折・捻挫・打撲等)をしてしまった直後にはRICE処置(安静・冷却・圧迫・拳上)(画像参照)をして炎症反応を抑えることが、早期の回復に繋がります。
⑴捻挫でも注意しましょう
捻挫は軽い状態ならば、問題なく治ることもありますが、重い場合は靭帯が大きく損傷しており、病院で治療を必要とする場合があります。捻挫だと思っていても検査をすると骨折していたということもありますし、捻挫によって靭帯が伸びてしまい、その後も捻挫を繰り返すようになってしまうこともあります。
⑵ひねって内出血があるような場合
すぐに病院で検査を受けたほうが良いです。捻挫や骨折というのはケガをしてすぐの方が治ろうとする力が強いので、痛みを我慢せず、おかしいと思ったら病院で検査を受けるようにしてください。
⑶ケガをしていなくても骨折する場合があります
足首をひねったりケガをしていなくても、小さな力が繰り返し骨の一部に加わることで起こる骨折があります。疲労骨折というものでランニングやジャンプ動作の繰り返しにより、骨の一部に負荷がかかり続け、いつの間にか骨折をしていることがあります。
いつの間にか骨折をしているので、歩いたり走ったりする事は出来るのに思いっきり走ったり、全力でプレーしたりしたときに痛みを感じることがありますので、知らずに骨折している場合があるということを理解し、おかしいと感じたら病院で検査を受けるようにしてください。
⑷捻挫と骨折を区別するのは難しい場合があります。
共通して言えることは、いずれも早く診断して適切に治療をすることが重要です。
⑸重要なのは、その後のリハビリテーションです。
理学療法士の指導の下、計画的にリハビリをする必要があります。もちろん、リハビリ時に鍼灸治療を受けられれば、回復や競技への復帰が早まります。
スポーツ障害の場合、しっかり治しておかないと繰り返してしまうことが多いので注意が必要です。疲労の蓄積による筋肉の緊張が原因のことが多いので、治療や予防には鍼灸がとても有効です。
自分でできるケア
スポーツ障害を予防するためには、日ごろから自分で行うケアが大切です。運動前後のストレッチや、固くなってしまった筋肉を温めることが基本です。特に、自分が気になる(動きに違和感がある)部位や過去にケガをしたことがある部位に関しては、念入りにケアすることが大切です。日頃から筋肉に疲労を蓄積させないでおくことは、パフォーマンスの向上になりますし、スポーツ外傷・スポーツ障害の予防になります。
スポーツ障害に対して鍼灸治療は有効?
結果が求められる厳しいプロスポーツの世界。高いレベルでの争いになれば、当日のコンディションが勝負の決め手になるケースも増えます。選手がベストなコンディションで試合に臨めるようにするために、野球やサッカーなどのプロスポーツチームにはコンディショニングの担当スタッフであるトレーナーが所属しており、(あまり知られて合いませんが)その多くが鍼灸師であったりマッサージ師であったりします。体のケアが重要な職業であるプロスポーツチームや選手の多くは、体のケアの重要性と鍼灸やマッサージの効果の大きさを知っているのです。スポーツ分野における鍼灸の効果は高く評価されております。
⑤肉離れ
肉離れとは?
肉離れは、筋肉が部分断裂するけがです。 筋肉と骨を結ぶ腱(けん)の損傷も含まれます。 筋肉が強く伸縮したとき、その力が強すぎて筋肉間の繊維や筋肉そのものが部分的に切れてしまう状態です。 肉離れが起きた部位は、痛み、腫れが生じ、内出血が起きる場合もあります。
原因は突然の衝撃
日頃から運動していない人では、ふくらはぎの肉離れが多くなります。 運動選手などと違い、走るときに体全体を使った走り方ができず、ふくらはぎだけに急激な負荷をかけてしまうからと考えられます。
スポーツによって肉離れを起こす箇所も違ってきます。
①ハムストリングス:短距離走のダッシュ時に使われる、太ももの後面の筋肉
②ふくらはぎ:バドミントンやテニスの切り替えし時に使われる筋肉
③太もも前面:サッカーのシュート時に使われる筋肉
また、肉離れを起こすと、力が抜けるような痛みや突然の衝撃を感じたとよく言われます。
症状
肉離れが起きてしまうと、運動時痛(動かすと痛む)・圧痛(押すと痛む)・ストレッチ痛(伸ばすと痛む)などの症状が出ます。肉離れは、違和感がある、もしくは軽度の痛みから、歩行困難になる状態までさまざまです。 重症の場合は、強い内出血も起きます。 筋肉損傷部は、腫れて痛みが出てきます。 特に肉離れを起こした部分は、伸ばすと痛みが強くなります。
処置
RICE処置(図1参照)
安静(Rest)
冷却(Icing)
圧迫(Compression)
患部を高く上げる(Elevation)
その後は、安静にしたまま患部を動かさないほうが早く良くなります。 ふくらはぎの軽い肉離れくらいなら、一週間ほどで元に戻るでしょう(表1参照)。 しかし、患部を温めるような行為は避けてください。 入浴は湯船につからず、シャワーのみにしてください。 また、飲酒は血流が良くなり、内出血量が増えてしまいます。 出血量が増えると筋肉繊維の中に大きな血のしこりができ、重症化する恐れもあります。けがをした当日はもちろん、その後もしばらくお酒は控えましょう。 肉離れを起こした箇所を押した時や、筋肉を伸ばした時に、痛みが残っていることがあります。 それらの箇所が改善するまでは、痛みを感じる動作やスポーツ競技は避けましょう。 肉離れは繰り返し発症することもあるので、ある程度良くなるまで無理は禁物です。
損傷した筋線維などの修復を促すために、局所の血流改善や筋緊張緩和を目的とした治療をし、段階的に関節可動域訓練や筋力トレーニングを行います。痛みの程度や個人差によって復帰までの目安は異なります。痛みがなくなってからでも再発しやすいので注意が必要です。
病院に行くのなら
病院で治療するならば、整形外科が専門になります。湿布・痛み止め・電気治療などが処方されます。
鍼灸院での治療
鍼灸治療は血流改善・筋緊張緩和に大きな効果を発揮しますので、肉離れの治療として回復・予防のどちらにも非常に有効です。硬くなってしまった筋肉に直接刺鍼することで、ピンポイントで患部の筋肉を柔らかくすることができます。治療後には、硬くなってしまった筋肉(硬結)が緩み柔らかくなるのを実感していただけます。